別表5-2

法人税の確定申告は税務の専門家でなければ、1年に1回(事業年度終了後の決算時期)しか触れないため、その時点では理解しても、次に思い出すのが1年後になるため、多くの方が難儀されています。

『パッと見て思い出せるものがあればいいのに』

実際に前回の理解を忘れた1年後に思い出すとっかかりとして、皆さん、Googleで検索しながら作業をされることかと思いますが、税務関係のサイトはなぜか文字だらけのものが多い印象があります。そこで今回、パッと思い出せるような記事をコラムとしてアップしていこうと思います。まずは第1回として、「租税公課の納付状況等に関する明細書」として知られる別表5-2から始めていきたいと思います。

金額の入力手順

別表5-2の上部は各種税金のフロー、すなわち期首から期末までの金額の動きがまとめられます。

縦は「1~5」、横は「①~⑥」の数字で表されたマスがあり、それぞれにどのような金額が入るかを理解できれば、恐れるに足りずです。

ただ、その前提として理解しておきたいのは「当期中の納税額」に位置づけられる③~⑤の区別です。税金を納めるとき、以下の3パターンの仕訳が発生します。

  1. 充当金取崩しの処理
  2. 仮払経理処理
  3. 損金経理処理

順に説明していきましょう。1の充当金取崩しの処理は、前期の負債に残高として残っている「未払法人税等」の決済を行う処理になり、仕訳で表現すると、

(借方)未払法人税等 XXX / (貸方)現金預金 XXX

となります。上記のサンプルでいうと、6,594,300円は前期にP/Lに法人税等として既に計上済み、但し未納、という状態のものなので、当期のP/Lには登場せず、ただ未納だったので当期に納税したという形になります。赤い矢印の①のようにマスでいうと2ー③に記載します。

次に2の仮払経理処理です。その名のとおり、仕訳もとてもシンプルです。

(借方)仮払金 XXX / (貸方)現金預金 XXX

3月決算の会社であれば、11月末までに納付される中間分の法人税納付の際にこの仕訳を計上することが実務上一般的です。但し、ここで注意が必要なのは、中間納付の仮払金処理はすべて「④仮払経理による納付」に記載するのではないということです。

以下の例は、黒字と赤字の両方のケースでの、中間納付の処理の顛末をまとめたものです。仮払金は一時的な処理であって、最終的に年度を通して黒字になるか、赤字になるかで、借方の勘定科目が変わってきます。
(厳密には、黒字でも法人税額<中間納付額の場合も赤字の場合と同様還付となります)

④仮払経理による納付の欄に金額が入るケースというのは、(3)赤字決算の場合のように、納めた金額が最終のB/Sで資産として残った場合に記入することになります。

上記のサンプルでは「⑤損金経理による納付」の欄に金額を記載しています。すなわち、これが3.損金経理処理となります。

(借方)法人税等 XXX / (貸方)未払法人税等 XXX

上記の記載手順は道府県民税や市町村民税では同様ですが、事業税では記載方法が異なります。事業税の箇所のサンプルはこちらになります。

事業税は損金算入の税金という点が他の税金とは異なる上、納付時点で損金になります。よって、事業税の前期未納分は当期に損金算入するということで、黄色の欄ではなく、赤枠の「②当期発生税額」の欄に記載することになります。事業税に関しては、①期首現在未納税額と⑥期末現在未納税額に金額を記載しない、とも言えます。

「納税充当金の計算」の欄との数字の繋がり

税金計算のソフトを使うと自動で転記される運用になっていますが、数字の繋がりを示すと以下のようになります。

黄色の欄の合計額が30の期首納税充当金の金額になり、31は税額計算した結果の金額が入ります。そして、34~37の取り崩し額については、「③充当金取崩しによる納付」に記載のある金額が入ります。見方を変えれば、③以外の欄は、納税充当金の増減とは直接関係がないことを意味しています。

別表4との関係図

別表5-2と別表4がどのように繋がっているかを確認しましょう。

法人税(青枠)、道府県民税と市町村民税(ともに赤枠)の3つは元々損金不算入の税金ですので、課税所得計算に関係しない「③充当金取崩しによる納付」と「④仮払経理による納付」に記載のある金額については、調整は不要ですが、「⑤損金経理による納付」に記載した金額を別表4で加算しないといけません。

別表4の1の金額はこれらの税金が控除された後の金額であり、ここで加算しないと、税金計算のもとになる課税所得がこの税金分小さくなってしまいます。

また、当期の税金の未払分は別表5-2)の31の金額(黄枠)であり、これも上記と同じ理由で損金不算入のため、課税所得を増加させるために、別表4で加算します。

一方、事業税(ベージュ枠)については、上記3つの税金とは異なり、損金算入される税金です。よって、「⑤損金経理による納付」の欄に記載された金額は調整不要ですが、「③充当金取崩しによる納付」と「④仮払経理による納付」に金額がある場合は、逆に加減算の対象となります。

これらの考え方は、その他の税金についても同様です。すなわち、損金算入される税金については、「③充当金取崩しによる納付」と「④仮払経理による納付」に記載のある金額を減算する必要がある一方、損金不算入の税金については、「⑤損金経理による納付」に記載があると、加算処理を行い、損金算入された影響を取り消す必要が出てきます。

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